防毒ケープが洗浄と経年によって淡いピンクへ変貌した、英国軍カモフラージュ史の異端的傑作。
概要
正式名称は「Cape, Anti-Gas, No.1, Camouflaged」。毒ガス攻撃から身体を守るため、1930年代に英国軍へ導入され、第二次世界大戦期に使用された防護衣である。軍服や装備の上から着用できる大型の設計で、ガス攻撃の脅威が薄れると雨具としても活用された。
現在「ピンクカモ」と呼ばれる色は、砂漠用に意図された迷彩ではない。本来はカーキまたはオリーブ地に濃いブラウンの斑点柄で、ガスや雨を防ぐため生地に施されていた亜麻仁油加工を煮沸洗浄したことや、長年の退色によってピンクベージュへ変化したものと考えられている。
特徴
軽量な生地を使用した膝丈のオーバーコート型で、ラグランスリーブ、スナップボタン式の前開き、大きく広がるAラインが特徴。背面には、背嚢や装備を背負ったまま着用するための「ハンプ」と呼ばれる立体的な膨らみが設けられている。
生地の裁断位置や退色の進み方が一着ごとに異なり、ピンク、ベージュ、ブラウンが混ざり合った個体差の大きな表情も魅力である。
カルチャーとの接点
北アフリカ戦線でLRDGや初期SASが砂漠迷彩として着用したという説が広く語られているが、確実な資料は確認されていない。ピンク色を砂漠用迷彩とする物語も、後年のビンテージ市場で広まった可能性が高い。
一方、その特異な配色と彫刻的なシルエットはファッション界で再評価されている。英国のアーカイブショップ「The Vintage Showroom」は代表的資料として紹介し、オリジナルを後染めした作品も制作。ナイジェル・ケーボンも自身のアーカイブをもとに、ピンクカモとガスケープの構造を複数のコレクションで再解釈している。
ビンテージ市場の価値
現存数が少ないうえ、薄手の生地と古い油脂加工の影響で、破れや硬化、スナップ周辺の欠損が生じやすい。そのため、ブロードアローや年代スタンプが確認でき、オリジナルのスナップ、背面のハンプ、ストラップ類が残る個体は特に評価が高い。
迷彩の発色と柄の出方も価値を左右し、ピンクとブラウンのコントラストが美しく残る個体はファッションアーカイブとしても人気がある。軍装品という枠を超え、英国ビンテージを代表するコレクターズピースのひとつとなっている。
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