
Text_VAZAAR Editorial
古さより、まず“かっこいいか”。高円寺・Antlerがつくる、自由なヴィンテージ。
SHOP & STYLE - いい服は、いい店にある。 -
高円寺の商店街を歩いていると現れる、古着と現代のブランドが自然に混ざり合うショップ「Antler」。店を営むのは、文化服装学院の同級生だった福永さんと辰口さんだ。卒業後、間を置かずに二人で店を立ち上げ、買い付けも海外からの発送も手探りで覚えてきた。そんな行動力とは裏腹に、服選びの基準はいたってシンプル。「古いかどうかより、自分たちがかっこいいと思えるか」。年代やカテゴリーに縛られず、一着ごとの面白さをすくい上げる二人に、Antlerができるまでと、店に並ぶ服のことを聞いた。
辰口寛太・福永竜源
文化服装学院の同級生。卒業後、同年7月にAntlerを共同でオープン。海外買い付けから商品選定、接客、店舗づくりまで、役割を明確に分けず、二人で話し合いながら運営している。ヴィンテージを軸に現代のブランドも織り交ぜ、年代やカテゴリーに縛られず、ファッションとして心が動く一着をセレクトしている。
卒業から数カ月。二人で始めた古着屋
ーまず、お二人の出会いから教えてください。
文化服装学院の同級生です。もともと友人で、一緒に古着屋へ行ったり、服の話をしたりしていました。
ー卒業後は、どこかのショップに勤めていたのでしょうか。
いえ、どこにも勤めていません。3月に卒業して、その年の7月には二人で店を開いていました。卒業から半年も経っていなかったですね。
ーかなり早いスタートですね。店を始めたきっかけは?
二人で下北沢の「Velvet」へよく通っていて、「いつか店をやりたいよね」と話していたんです。そこでオーナーの高相さんに「やっちゃえばいいじゃん」と背中を押してもらったのがきっかけです。言葉にすると軽く聞こえるかもしれませんが、本当に「やってみるか」「なんとかなるだろう」というところから始まりました。
ー商品の仕入れや海外からの配送も、最初から自分たちで?
最初の買い付けで、たまたま高相さんと渡米のタイミングが重なり、配送会社や日本への送り方など、基本的な手順を教えていただきました。それ以外は、関税も含めて自分たちで調べながら、買い付けに行くたびに少しずつルートを広げてきました。

馴染みのある街、高円寺で
ー高円寺に店を構えた理由はありますか。
(福永さん)文化服装学院へ通うために上京し、高円寺に住んでいたことが大きいですね。辰口さんも遊びに来たり泊まりに来たりしていたので、下北沢などに比べて二人とも馴染みがありました。ちょうど近くにこの物件が空いていたこともあり、いろいろな流れが重なって高円寺で始めることになりました。
ー実際に店を続けるなかで、高円寺にはどんな魅力を感じますか。
古着に関心がある人はもちろん、自分なりのこだわりを持って洋服屋へ足を運ぶ人が多い街だと思います。そういう方には、Antlerのスタイルにも共感してもらいやすいのかなと。SNSを見て来てくださる方だけでなく、商店街を歩いていて、ふらっと入ってくださる方も多いです。

「古着屋」よりも、「ファッションの店」でありたい
ーAntlerを初めて知る方に向けて、どんなショップか教えてください。
ヴィンテージを扱っていることは大前提ですが、それだけにこだわっているわけではありません。僕たちはもともとファッションが好きなので、古いか新しいかではなく、まず服としてかっこいいかを見ています。1950年代前後のヴィンテージや、ダメージのある“ボロ”は二人とも好きです。グランジっぽい雰囲気や、一点物らしさのある服も多い。ただ、特定の年代やジャンルで店を固めるのではなく、ほかの店とはかぶらないような服を、自分たちなりの感覚で選んでいます。
ー店づくりで大切にしていることも、そこにつながりますか。
そうですね。古いから買うのではなく、まず見た瞬間にときめくかどうか。一着のなかに「ここがかっこいい」「このディテールが面白い」と言える“推しのポイント”があるかは大切にしています。「売れそうだから」というより、二人で「これは面白いよね」と思えることが先にある。その感覚に一人でも共感してくれる人がいればいい、という気持ちで買い付けています
ー二人の感覚そのものが、Antlerらしさになっている。
いい古着屋はたくさんあります。そのなかで自分たちの色を出せるとしたら、最後は自分たちのセンスを信じるしかない。Antlerの強みは、そこに尽きると思います。

鹿の角から生まれた「Antler」という名前
ー店名の由来を教えてください。
“Antler”は英語で鹿の角という意味です。もともと店に鹿の角を飾れたらかっこいいよね、と話していました。オープンの約1カ月前、アメリカで実際に角を買うことができて、車の中で名前を調べたら「Antlerなら店名にもできそうだね」と。そのまま決まりました。
ー店内にも、海外で買い付けたものが使われていますね。
アメリカで見つけたシャンデリアや鹿の角などを、少しずつ増やしています。アート作品は、知人に描いてもらったものや、いただいたものも多いです。自分たちで自由に店をつくっているので、そのときの気分に合わせて変えていけるのもいいところ。服だけを並べた古着屋ではなく、アートや現代のブランドも含めて、ファッションの幅が広がるような場所にしたいと思っています。

ヴィンテージと現代のブランドを、同じ目線で
ー店内には、ヴィンテージだけでなく現代のブランドも並んでいます。
もともと学生時代から好きで着ていたブランドや、店を続けるなかで声をかけていただいたブランドを扱っています。ただ、新品をたくさん並べるセレクトショップのような構成ではなく、あくまで古着が中心です。ヴィンテージと混ぜて着られるものを少し置くことで、スタイリングの幅が広がればいいなと思っています。ブランドのアーカイブや、デザインの元ネタになったような古着も好きなので、僕たちのなかではどちらも地続きなんです。
ー音楽など、特定のカルチャーとのつながりも意識していますか。
結果的に音楽を感じる服が集まることはありますが、特定のカルチャーを強く打ち出そうとしているわけではありません。あくまで、ファッションが好きな二人がやっているヴィンテージショップ。それくらいに捉えてもらうのが近いと思います。

Antlerのセレクトをつくる服
ー現在、特に力を入れているアイテムを教えてください。
オープン当初から変わらず好きなのは、やっぱりボロです。カバーオールやデニムなら、きれいなものより、強くフェードしていたり、何度もリペアされていたりするものに惹かれます。裏地が破れていても、それを含めてかっこいいと思える服がある。そういう一点物らしさは、Antlerをよく表していると思います。最近はウエスタンブーツも多めに買い付けました。サイズを選べるように数を揃えているので、オンラインで気になるものを見つけて、店頭で実際に履き比べてもらえたらうれしいです。
ースーベニアジャケットも印象的です。
スカジャンも好きですが、Antlerではドイツ駐留の記念として作られた“ジャーマニースーベニア”を積極的に探しています。肩にラインが入っていたり、刺繍のフォントや色使いが一点ずつ違ったり。地図やエンブレムだけでなく、ビールやキャラクターのようなモチーフが入るものもあって、同じものがほとんどない面白さがあります。
ー1950年代らしいアイテムでは、どんなものを揃えていますか。
ギャバジンジャケットは毎回の買い付けで探すアイテムです。無地やかすり柄、リバーシブルなどがありますが、特にレーヨンギャバジンは、落ち感と少し重みのある着心地が魅力です。古臭く見えず、今の服ともきれいに合わせられる。できるだけ、ゆとりを持って着られる大きめのサイズも集めています。1950〜60年代のオープンカラーシャツも、Antlerらしい品揃えの一つです。オンブレチェックやブラウン系など、日本で着やすい配色を中心に、柄そのものがきちんとかっこいいと思えるものを選んでいます。
ーかなりダメージの強い服もありますね。
着やすいボロもあれば、「誰が着るんだろう」と言われるくらい大胆に壊れた服も買い付けます(笑)。もともと長袖だったものが半袖にカットされていたり、強く日焼けしていたり。普通の服とは違うけれど、だからこそファッションとして面白い。そういう服を探している方や、海外のお客様が選んでくださることも多いです。流行っているかどうかにかかわらず、自分たちがかっこいいと思う限り、ボロも1950年代の服も変わらず扱っていくと思います。
ヴィンテージに詳しくなくても、自由に楽しめる場所へ
ーお客様には、Antlerでどんな時間を過ごしてほしいですか。
ヴィンテージという言葉に気負わず、普通におしゃれをしに来てもらえたらと思っています。年代を揃えたり、「この服にはこれを合わせなければいけない」と考えたりする必要はありません。1950年代の服を現代のブランドと合わせてもいいし、グランジにも、きれいなスタイルにもできる。自分ならどう着るかを想像しながら、自由に楽しんでほしいです。ヴィンテージに詳しくない方も、もちろん大歓迎です。普段持っている服を教えてもらえれば、合わせ方も一緒に考えます。決まった正解がないからこそ、ほかとは少し違うスタイリングを提案できると思っています。
古さや希少性から服を見る前に、まずは心が動くかどうか。Antlerに並ぶ一着一着からは、二人が買い付け先で感じた、その最初のときめきが伝わってくる。高円寺を訪れたら、ヴィンテージという枠を少しだけ忘れて、自分なりの一着を探してみてほしい。













































